映画『3月のライオン』がとんだヒューマンドラマだった

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映画『3月のライオン』見てきた。

 

ゴールデンウィークに現在上映中の映画『3月のライオン前編・後編』を観賞してきました。

漫画は全巻揃えており、将棋が趣味ということもあってかなり公開を楽しみにしていたのですが、予想をはるかに超えるおもしろさでした。

正直ここまでとは思っておらず、感動が高ぶっているので急遽レビューを書こうと思います。

 

前編は1か月前に鑑賞し記憶が薄れてしまっているのですが、なんとか思い出しながら書きます。

ネタバレも入ってしまうと思うので、本編をご覧になった後に読んでください。

 

 

あらすじ

 

主人公の桐山零は史上5人目にしてプロになった天才将棋棋士。

幼いころに事故で両親と妹を亡くし、幸田家に引き取られる。

将棋一家の幸田家の内弟子となりプロを目指すが、零のあまりの才能に幸田家は分裂してしまい、零は家を出ることを決意する。

 

 

感想

 

感想どうやって書くか悩んだのですが、主要キャラクターに焦点を当てて書いていきたいと思います。

 

 

幸田柾近

 

零の父親とは奨励会時代からの友人であり親交が深く、事故後零を引き取った張本人。

告別式で零に放った「君は将棋好きか?」というセリフはこの作品の大きなテーマであるように思えるが、それについては後で詳しく書く。

 

私が感じたのは、彼もまた将棋しか頭の中にないのだなってこと。

もう少し子供たちを愛してあげることはできなかったのだろうか。

 

柾近が3人の子供にプレゼントを渡すシーンがあるのだが、見ていて心が痛んだ。

実子の香子と歩にそれぞれゲームやらを渡し、義子の零に”将棋の駒”をプレゼントしたのだ。

 

幸田家においては将棋が全てであり、香子、歩、零はプロを目指している。

その中で零に駒をプレゼントするのは、香子と歩にとっては”愛されていない”と考えて当然なのだ。

将棋の家で父に才能がないと諭され、横から入ってきた零に父を奪われる2人は胸がはちきれる思いであっただろう。

香子と歩にとって、それは”死刑宣告”に違いない。

 

彼が自分自身で息子と娘との距離を引き離してしまったのではないかと思う。

 

 

林田先生

 

零の高校の教師で3月のライオンという作品において「最も普通な人」というイメージ。

癖の強いキャラクターが多い中、普通の人。

屋上で零と話しながらカップラーメンを食べている。

それしか感想がない。

 

 

島田開

 

作品において、零が初めてぶつかった「壁」ではなかろうか。

順位戦はA級、めちゃくちゃ強い。

 

「とらえどころのない将棋を指す人」が零の島田に対する印象であったが、見事にその頭をかち割ってくれた。

それまで1人で将棋の研究をしていた零の、島田に対して放った「研究会に入れてください」という言葉からわかるように、彼を大きく成長させてくれた。

 

後編ではほとんど出番がなかったことが残念。

 

 

宗谷冬司

 

将棋界の神様。

彼も主人公と同じく中学生でプロ棋士となり、以来将棋界のトップを走り続けている。

史上最年少名人、7冠制覇と正真正銘の第一人者。

 

1つ気になったのは、前夜祭でお茶をこぼされた時のシーン。

漫画を読んでいても違和感を感じたのだが、なぜあのシーンを入れたのだろうか。

彼が持っている秘密と行動の意味があのシーンから全く理解できないので誰か説明お願いします。

 

また、原作では名セリフを多く残しているにもかかわらず映画ではそれらを見ることができなかったのも残念。

記念対局における、宗谷の零に対する「そういうもんだよ」は個人的にトップクラスの名セリフなので是非とも入れてほしかった。

 

これは映像作品の難しさといったところだろうか。

 

 

後藤正宗

 

原作よりも”人間らしさ”が増している気がする。

妻の病院に頻繁に通うシーンを入れてくれたのは良かったと思う。

宗谷を抜かせば主人公にとってラスボス的位置づけの人物であり、後編では正に最後の壁として描かれていた。

 

妻を愛し、将棋を愛し、それゆえの「これで将棋に集中できる」は彼だけが持ち得る感情だろう。

だからこそ、最後香子と手をつないで家に入るシーンは「なんだかなー」と思った。

 

あともう1つ残念だったのが彼の手つき。

強面で、重厚な将棋が売りで、がちがちの殴り合いも辞さない彼の駒音が”ぺちん”なのは反則。

”バシッ!”や”パシン!”ではなく”ぺちん”ってどーなのよ。

 

そこらへんもこだわってほしかった。

 

 

二階堂晴信

 

零のライバル。

幼少期から難病を患っている。

表情に目が行ってあまりセリフが頭に入ってこなかった。

 

 

川本あかり

 

零がよくお世話になる川本家の長女。

動物を拾ってきてはデブらせるのが趣味という変な人。

酔って潰れた零を拾い、デブらせようと目論む。

 

母親を早くに亡くし、それ以来2人の妹の”母親役”に徹している。

妹のひなたが中学校で苛められ、制服を真っ黒にして帰ってきたシーンが心に残っている。

 

苛めに立ち向かい、自分の意見をしっかりと主張するひなたに対して、祖父は「偉い!」とひなたを褒めるのだが、あかりは違った。

「どうして逃げなかったの?」という感情が先にきてしまったのだ。

妹が大切で、「妹に傷ついてほしくない」という思いだ。

 

そのように感じてしまった自分、苛めに立ち向かった妹を褒めてやれなかった自分に葛藤する姿があまりに人間らしく、心を動かされた。

 

 

川本ひなた

 

川本家次女。

零が「一生大切にしよう」と決めた相手。

性格は底なしに明るく、眩しい。

 

零は幼少期将棋に明け暮れ性格が暗く、それが原因で苛められていたのだが、その零を彼女は救った。

苛めに正面から立ち向かい、「自分がしたことは間違っていない」といえる彼女に零は救われた。

その言葉が、真っすぐな考えが零の心に響いた。

 

3月のライオンにおいて、ひなたと3女モモの2人は筋斗雲に乗れると思う。

 

 

幸田香子

 

幸田家長女にして零の義姉。

初めはキャスティングが微妙だと思ったけど、後半は気にならなかった。

 

回想で出てきた香子の演技が良かった。

よそから来た、しかも年下の零に敗北し、父親からも奨励会を止めるよう諭された際の切れっぷりが印象に残っている。

映画においてはそのプライドの高さよりも、心の弱さが多く映し出されていたように思う。

 

零に敗北した対局で実は勝ち筋があったというシーンが追加されているのだが、なぜ追加したのかがわからない。

負けを素直に受け入れることができず零に八つ当たりしたした過去と今の成長を描いてるって解釈でいいんでしょうか。

 

 

誠二郎

 

個人的に後編第2の主人公。

行動、考え方、薄っぺらさが私にそっくりで、最も感情移入してしまった人物。

 

誠二郎は川本姉妹の実の父親で、他に好きな人ができて離婚してしまう。

その後、のこのこ3姉妹に会いに来て、「また一緒に暮らそう」とか言い出す。

薄っぺらい。

 

残された3姉妹がどんな気持ちだったか彼は知らない。いや、興味がない。

親が離婚し、母親が他界し、その子供たちがどう思って育ったか興味がない。

それよりも自分の都合が優先で、「娘たちなら自分の申し出を断れないだろう」と考えて一言、「また一緒に暮らそう」。

どうしようかと心が揺れるあかりとひなを見るや、モモをデパートの屋上に連れていき遊ぶあたりがせこい。

 

薄っぺらく、自分のことしか考えず、ご都合主義で、でもそこが人間らしくて、私にそっくりで、感情移入してしまった。

 

ただ、最後は娘に否定されてしまう。

自分の頼み事は何でも聞いてもらえるだろうと思っていた娘に拒絶されてしまう。

正しくない人物が当然のように否定される。

映画的には良いシーンのはずなのに、将来の自分の姿を見ているようで胸が痛くなった。

 

 

桐山零

 

本作の主人公。

私は、映画3月のライオンから、2つの大きなテーマを感じた。

1つは、零の人間としての成長

1つは、零が将棋を”好きになる”ことだ。

 

零は幼少期からあまり人付き合いが得意ではなかったが、川本家に出会って変わった。

あかりに拾われ、ひなたに自分の過去を肯定され、恋をして、守りたいと思って、成長した。

 

特に、誠二郎との件で大きく成長した。

大切な人を守りたいがどうすればいいかわからず、一生懸命もがいて、無茶をして、それが空回りして、逆に大切な人を傷つけてしまった。

そのことに絶望し、以前の様に将棋に取りつかれてしまうが、また川本家の扉をたたく。

 

自分の気持ちを素直に伝えるのは恥ずかしいし、難しい。

勇気を振り絞って気持ちを伝える零と、それを受け入れてくれる川本家に心を打たれた。

 

次にもう1つのテーマ。

彼は将棋が好きではなかった。

幸田に将棋が好きか問われ「ハイ」と答えたとき、将棋が好きではなかった。

彼の世界には将棋以外何もなかったにもかかわらず将棋が好きではなかった。

 

両親と妹を事故で亡くし、自分には将棋しかないから嫌いだけどやっていた。

将棋が原因で、自分が幸田家をバラバラにしてしまったという思いがあった。

 

しかし、彼は変わった。

その純粋な楽しさを思い出し、川本家に出会ったことで彼は変わった。

ラストシーンで同じ質問を問われたとき、彼は本当に将棋が好きになっていたと思う。

 

 

全体的な感想

 

前後編非常に楽しむことができた。

冒頭に書いたよう期待はしていなかったのだが、ここまで感動させられるとは思っていなかった。

ただし、これは私が原作を5周は読んでいることもあっての感想で、映画に直接映されていない行間を埋めることができるのと、原作好きという心理に引っ張られていることもあるかもしれない。

もし将棋も原作も知らない人がこの映画を見たらそこまで楽しむことはできないだろうなとは思った。

 

あと気になったこと。

1つは駒の持ち方。

駒を持つ動作、指す動作、駒音、そのどれもが手慣れていなかった。

画面に手が映るたびに「うーん微妙」と思ってしまった。

 

もう1つは対局中の姿勢。

私は将棋道場でたまに将棋を指すのと、プロの観戦もよくする。

将棋盤の前で人と2時間も向かい合い、考え込んでいるといろいろなことを感じる。

映画からは残念ながらそれらを感じることができなかった。

目線、ため息、手の癖、不利な時の顔の歪み、集中がふと途切れた時の表情、対局が終わった後の安堵、自分の情けなさ、怒り、様々な表情や感情を実際に対局を重ねると感じることができる。

しかし、画面に映る役者の姿は、私が今まで対局した彼らとはどこか違っていた。

それは非常に残念だった。

 

 

いくつか気になる点はあるものの、全体としては素晴らしい作品だったと思う。

 

以下余談。

3月のライオン主人公桐山零と、将棋のプロ棋士藤井聡太四段が重ねられることがあるみたいだが、全然違うと思う。

藤井総太四段の方が遥かに才能がある。

漫画の天才主人公を上回る才能を持っており、ほんとにすごい中学生が出てきたなと思う。

 

ここまででまさかの4000字オーバー。

疲れた、眠る。

 

 

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